新着情報 チェックはこちら
テーブル
チェア
ソファ・ベンチ
サイドボード・カップボード
チェスト・ワードローブ
ブックケース
グラスキャビネット
デスク
ドレッサー
小物家具
ベッド・スクリーン・コートハンガー
ミラー・額絵
ステンドグラス・ドア
照明器具
ショーケース・ディスプレイアイテム
19世紀の英国の詩人でありデザイナー、そして社会主義者でもあったウィリアム・モリス。彼が残したデザインは、没後120年以上が経過した今もなお私たちの心を惹きつけてやみません。
工業化により大きく変貌を遂げようとする当時の英国において、自然との調和を訴え、手仕事にこだわったモリスの思想は美術と工芸の近代的な融合、まさにアーツアンドクラフツを目指したものでした。
こちらのコンテンツでは、ウィリアム・モリスのデザインとアンティーク家具についてご紹介いたします。
目次
1:ウィリアム・モリスとは
2:ウィリアム・モリスのデザインについて
3:ウィリアム・モリス×ジェオグラフィカのアンティーク
3−1 モリス×チェアー
3−2 モリス×ランプシェード
William Morris (1834 - 1896)
産業革命期のイギリス、その激動の時代を生きたウィリアム・モリス。19世紀を代表するテキスタイルデザイナーであり、また詩人、小説家、翻訳家、思想家としての顔を併せ持つ、近代デザイン史上に大きな影響を与えた人物です。
「役に立たないもの、美しいと思わないものを家に置いてはならない」
有名なこの言葉には、当時の商業主義や機械化による大量生産から粗悪品が出回り、熟練の技や中世から培われた手仕事の美しさが失われてゆくことへの憂いが込められていました。生活と芸術の融合を目指し、クラフトマンシップを蘇らせんとしたモリスは、様々な分野で活躍する職人を集結し、"モリス商会"を設立します。モリスの思想やそのデザインは、今もなお多くの人を魅了し続けています。
モリスは平面デザイン=壁紙やテキスタイルデザインにおいて、彼の才能が最も発揮されています。単純な幾何学的、抽象的、記号的な平面デザインでは無く、装飾に自然を取り入れ、平面性や様式性は保ちながらも壁や床がそのまま森や川や野であるかのように、生き生きとした美しさを放っています。故に、長い年月を経た今日でも決して廃れる事なく、常に新鮮で魅惑的なデザインとして私たちの心を惹きつけるのでしょう。
モリスは1862年に3つの壁紙デザインを発表しています。『Daisy (ひなぎく)』『Fruits(果実あるいはざくろ)』『Trellis(トレリス)』の3作品です。
いまでこそ人気の柄ですが、発表当時はあまり評判が良くなく、モリスはがっかりしてしまい壁紙デザインを一時中断してしまいます。
しかしながら、1871〜2年頃からモリスの本格的なデザイン活動が始まります。1870年に『地上の楽園』最終巻を刊行し、モリスの詩人としての評価が不動のものとなった事がその機みとなったことでしょう。モリスのデザインは4つの時代に分けて語られていますが、1871年〜1876年までを第1期とし、第1期最初のデザインと言われているのが『Scroll(スクロール)』です。オリジナルは壁紙としてデザインされました。
葉や枝で埋められた地に、曲線的な葉や花が噴水のように吹き出した躍動感のあるデザイン。1870年から手がけた彩色写本の装飾を壁紙デザインにももたらしたと言われています。自然さを残しつつ渦巻き状の曲線の戯れを楽しむ、モリスらしいデザインシリーズの始まりです。
1872〜76年の間には、『Jasmin(ジャスミン)』『Larkspur(ひえん草)』『Vine(ぶどう)』『Marigold(マリーゴールド)』『Pimpernel(るりはこべ)』等の壁紙デザインや、『Honeysuckle&Tulip(すいかずらとチューリップ)』『Snakeshead(スネークヘッド)』等のテキスタイルデザインを発表します。
1876年に発表された『Pimpernel(るりはこべ)』はターンノーヴァーと言われる手法を初めて使ったデザイン。モリスは初め、あからさまなリピートによるデザインを嫌い、できるだけ規則性を出さないようにデザインしていましたが、テキスタイルを手がけるようになってパターンの規則性を受け入れるようになります。
1876年〜82年にかけては壁紙から織物へ移行していきます(第2期)。 モリスは織物の研究に夢中になっており、デザインパターンも織物に向いているシンメトリーやリピートを意識したものになっています。
この時期に発表されたデザインの中で恐らく最も親しまれているものが『Brer Rabbit (兄弟うさぎ)』ではないでしょうか。
『Pimpernel(るりはこべ)』と同様にターンノーヴァーによって向かい合ったうさぎと小鳥がリピートされるデザイン。植物を描くことがうまかったモリスですが意外なことに動物や植物を描くのが苦手だった様で『Brer Rabbit(兄弟うさぎ)』のうさぎや鳥は、モリスの友人でモリス紹介の建築担当でもあったフィリップ・ウェブが描いています。
これまでの第1期、2期では、自然から直接デザインを学ぼうとする《自然主義》の時代でしたが、1883年〜90年までの第3期になると、モリスは博物館へ通い、歴史的な織物からデザインを学ぶようになります。サウス・ケンジントン博物館に通ってイタリアのヴェルヴェットの布地などのパターンに魅せられたモリスは、染やカーペットなどの分野にもデザインを広げていきます。そしてモリスのデザインは自然と人間が歴史的に蓄積してきたパターンとの融合を成し遂げていきます。
モリスのデザインの中で最もポピュラーで愛され続けている『Strawberry Thief(いちご泥棒)』がデザインされたのもこの時期です。
1881年末、それまで工房を構えていたクイーンズ・スクエアからマートン・アビーへ移り、遂に自然の植物染料であるインディゴによる染色が成功します。『Strawberry Thief(いちご泥棒)』はマートン・アビー工房において最初に作られた多色使いのインディゴ抜染プリント生地。
モリスの夏の別荘「ケルムスコット・マナー」の庭で、いちごをついばむツグミたちから着想を得てデザインされ、小鳥と花、いちごの図柄の後ろに森が沈んだモリスのユートピアを感じる代表作です。
そして1890年〜96年の第4期に入ると、モリスの興味は美しい本の製作・出版へと向けられるようになります。『ケルムスコット・プレス』設立のため活字のデザインに熱中し、工房の仕事は後継者であるジョン・ヘンリー・ダールに任せるようになります。刺繍から壁紙まで、ダールはモリスが手がけた全ての分野をカバーできるようになり、1896年にモリスが没した後も工房を活動させることができました。
John Henry Dearle (1860-1932)
1878年、モリスはタペストリーの製作を始めるにあたり、若い織工を3人雇います。その内の1人がダールです。1879年にクイーンズ・スクエアの工房へ呼ばれたダールは、タペストリーの織り方をモリスに教えられます。モリスにデザインの才能を認められ、1890年にはチーフデザイナーになり、染織やカーペット、刺繍のデザインを手がけました。モリスのエッセンスを受け継ぎながらも独自の才能を開花させたダールの作品も、後世まで普遍的に愛され続けるものばかりです。
ダールがデザインした代表的な作品
ジェオグラフィカではモリスやモリス商会がデザインしたテキスタイルをチェアーやランプシェード、ソーイングボックス、クッション等に用いています。ここからは、ジェオグラフィカのアンティーク家具×ウィリアム・モリスのご紹介です。
一点もののアンティーク家具とモリスがデザインしたファブリックの組み合わせは無限大。当店ではチェアーのデザインに一番相応しいものを一点一点吟味しながら選んでいます。
Snakeshead×ロッキングチェアー
デザイン:William Morris
デザイン年:1876年
ウィリアム・モリスがデザインしたテキスタイルは、比較的柄のリピートが大きいものが多く、生地面の広いソファーやイージーチェアーへ用いると、柄が綺麗に入って特によく映えます。
こちらのロッキングチェアーで使用した『Snakeshead』は左右対称のターンノーヴァーパターン。モリスのデザインの中では比較的リピートが小振りで、ロッキングチェアーだけではなく、小椅子やスツールなどに使用しても柄が綺麗に入りやすい応用性の高いデザインです。
ターニング(挽物細工)が施されたビーチ材のフレームは、モリスの信念である「手仕事による美しさ」そのものを体現したような丁寧な造り。
『Snakeshead』はモリスが研究していたインドのテキスタイルの色や模様の影響を受けたパターンのひとつ。「スネークヘッド(蛇の頭)」と呼ばれる釣鐘型のフリティラリアの花がより大きくフォーマルなモチーフを彩っています。
Willow Bough×ナーシングチェアー
デザイン:William Morris
デザイン年:1887年
1887年に発表された『Willow Bough(ウィローボウ)』は、1874年の『Willow(柳)』を新しい感覚で再デザインしたもの。モリスの代表作の一つとして愛され続けています。1874年の『Willow(柳)』では地紋が敷かれていましたが、『Willow Bough(ウィローボウ)』の地は無地で、柳がよりはっきりと浮かび上がるようになっています。規則性を感じさせない、躍動感のある柳のデザインは、どこでカットしても綺麗なため、こちらも小椅子やスツール等様々なチェアーデザインに合わせやすいテキスタイルです。
バーリーシュガーツイストの斜に入るシルエットと、柳がゆったりとした曲線を描きながら伸びてゆく様子の親和性が高く、チェアーが持つクラシカルな雰囲気をより高めた仕上がりになっています。
写真のナーシングチェアーのフレームはマホガニー材。カジュアルなものからエレガントなものまで、ヴァリエーション豊かなモリスのファブリックは、もちろんフレームのデザインにもよりますが、アンティークチェアーに合わせやすく、相乗効果でフレーム本来の美しさをより美しく昇華させる魔法のようなデザインです。
Blackthorn×スツール
デザイン:John Henry Dearle
デザイン年:1892年
『Blackthorn(りんぼく)』はモリスの愛弟子、ジョン・ヘンリー・ダールによるデザインで、オリジナルは23個の版木を用いてハンドプリントされました。モリスの好んだ英国の花、バイモやブラックトーンやスミレが描かれ、生き生きとした自然の美しさを左右対称の秀逸なデザインに凝縮した見事な作品です。
柄のリピートは縦80.5cm横68cmとかなりの大柄ですが、色とりどりの花、一つ一つのデザインが特徴的かつ印象的なため、スツールのような小さなチェアーに用いても美しく仕上がります。
尖った青い葉を辿ると大きな狼の頭が浮かび上がる、隠し絵のようなデザインも遊び心があり、愉しいデザイン。
こちらのスツールはウォールナット材。やや明るめウォールナット材のフレームと合わせると、深いグリーンの色合いが調和し、森の中を想起させるような仕上がりになります。
ソーイングボックス×Strawberry Thief
デザイン:William Morris
デザイン年:1883年
ソーイングボックスの収納部分は、蓋を閉じていると中は見えず、ソーイングボックスを使う人だけが見ることができる少し秘密めいた空間です。そんな空間に、ウィリアム・モリスのファブリックはぴったり。蓋を開けると広がる鮮やかで愛らしい世界、使うたびに愉しさが広がります。
ウィリアム・モリスの卓越したテキスタイルデザインは、どこをとっても"モリス"であるのに、可愛いらしいものからシックなものまでその種類は多岐にわたります。木製のスタンドと非常によく合い、大胆な色使いも不思議と空間に馴染んでみせるのです。
ランプシェード一覧はこちら→
Kennet×ランプシェード
デザイン:William Morris
デザイン年:1883年
オリジナルはウィリアム・モリスがマートン・アビー工房で生産したインディゴ抜染プリント生地。図案化した向日葵と葉のモチーフが、葡萄と藁の小さなパターンの上を豊かな曲線を描いて流れるデザインで、テムズ川支流のケネット川から名付けられました。
美術館へ通い、イタリアの歴史的織物を学んでいたモリスは、そのエッセンスを数々のテキスタイルに用い、古い文様をモダンデザインへ結びつける事に成功しました。斬新でありながらも普遍的で広く親しまれるモリスデザインの根源には、古き良きものを熟知する、モリスの学びの精神が生かされている事でしょう。
オリジナルのKennetは藍色ですが、その後に様々な色が加えられました。落ち着いた配色のランプシェードは、インテリアにそっと灯りと華を添える優秀なアイテムです。
Wilhelmina×ランプシェード
最後にご紹介するのは、ウィリアム・モリスによるふたつの刺繍作品からインスピレーションを受け、新たなデザインとしてそれぞれの要素を組み合わせた『Wilhelmina』。アカンサスの葉やハニーサックルなどの植物がともに描かれ、"モリスらしさ"と現代的な感覚が見事に調和したデコラティブで華やかなデザイン。
「芸術と生活を統一化する」というアーツアンドクラフツの精神と「人々の生活の質を向上させる」というモリスの想いは、イギリスのサンダーソン社「MORRIS&Co.」に受け継がれ続けています。同社が保有するモリス商会の膨大な資料は、現代のデザイナーへ計り知れないインスピレーションを与え、創造性あふれる作品を次々と生み出す原動力となっているのです。
最後までお読み頂きありがとうございます。
アーツアンドクラフツ運動によって生活の中に芸術を取り入れるべく活動したウィリアム・モリス。当時の最先端のデザイン生地と流行の家具が100年の時を経て同じように手仕事にこだわるアンティークショップで邂逅することに不思議な巡り合わせを感じます。
"もっとも重要で切望されている芸術の創作は何かと問われれば、私は美しい家と答えるだろう"
自然を愛し、手仕事による美しいものを愛したウィリアム・モリスによって生み出された魅力的なデザインの数々を、日々の生活の中に取り入れてみませんか。
商品についてご質問がございましたら、メールまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
Mail shop@geographica.jp
【ジェオグラフィカのアンティーク家具について】
ジェオグラフィカのアンティーク家具は、英国を中心とした欧州のアンティークディーラーとの間に長年に渡って築いてきた、独自のネットワークから仕入れられています。品質、コンディションともに厳選されたジェオグラフィカのアンティーク家具は、設備の整った横浜ファクトリーにて、専任の修復スタッフの手で「それぞれの家具にとってベストな状態」に修復されます。
たとえば、チェアーは丁寧に解体してからまた長い間使える強度が保てるように、しっかりと組み直します。シートも同じく、古い生地やクッションを剥がして、そのチェアーに合わせて新しく選んだファブリックできれいに張替えをします。
テーブルも同じくしっかりと強度を出すための組み直しをしたあとに、アンティークの風合いを残しつつもきれいに、元々の塗面をできるだけ活かしながら全体的に再塗装を施します。
【アンティーク家具の修復・修理について】
ジェオグラフィカのアンティーク家具の修復風景については、BSフジで放映中の「名品再生〜ネオレトロの世界〜」でもご紹介頂きました。
お時間がございましたら是非ご覧ください。
【BSフジ 名品再生〜ネオレトロの世界〜】
※写真はイメージです。※商品は一点ものにつき売約の場合はご容赦ください。