ジェオグラフィカではアンティーク家具のセレクションにおいて美しさと共に、機能性や実用性を特に重視しています。
すべてのアンティーク家具を日常の生活で普通にお使いいただけるように、丁寧に修復した状態でお届けします。
アンティーク家具の買い付けは現地での直接買い付けと多くの現地ディーラーからほぼ毎日届くメールを通して行われています。切れ目なく情報を収集することで、お客様のご要望に細かくお応えしています。
数々のアンティーク家具は海上コンテナで毎月コンスタントに入荷し、順次修復を終え店頭に並びます。これらの商品はオンラインショップでもお買い求めいただけます。
In-House Workshop -自社工房で修復-
ジェオグラフィカでは、アンティーク家具の修復の要である木工作業と塗装作業をアウトソーシング(外部依託)いたしません。ジェオグラフィカの工房には、高い専門技術を持つ熟練の修復スタッフや、志のある若いスタッフが常時在籍し、日々研鑽につとめ、技術の向上を図っています。
工房では、入荷した家具すべてに対してそれぞれに個別の修復カルテを作成していきます。このカルテの作成はその後の修復作業において極めて重要な意味を持ちます。買い付け時点でのコンディションと入荷時のそれを比較検討し、適切な修復方針が決定されます。一連の作業はアンティーク家具の修復業務において、スタッフの直感力と目を養うための最善の方法のひとつです。
ここで作成されたカルテはデータベース化され、修復履歴なども随時記入され、販売後も永く保管されて幾年か後の再修理のご依頼にもすぐに対応ができるようになっています。
From the Past to the Future -時を刻み続けるために-
アンティークは長い年月を経て、今私たちの手元にあります。私たちはそれらをあるべき姿に再生し次の世代に繋げていくことを仕事にしています。修復の仕事に嘘やごまかしがあってはいけません。これから行う作業は正しい修復なのかを私たちは自問し続けています。
使用する材料等に注意を払わず、経済性や機能性のみを重視し安易な方法で新品同様に仕上げるのであればその家具はもはや本来のアンティーク家具ではなくなり、その家具を購入する意義が薄れてしまいます。
耐水性、耐熱性だけを高める為にウレタンやラッカーなどを不用意に使用する事は、そのアンティーク家具が経てきた時の流れを、またこれからも刻み続けるはずだった時計の動きを止めてしまうことになるのです。こうなってしまうと残念ながらこの家具のアンティークとしての歴史は終わってしまいます。
Woodwork -木工-
ジェオグラフィカで修復士の道を志すスタッフは、まず最初にオークチェアの解体から始めます。再度組み上げることを前提にした慎重な解体作業を通じて家具の構造や、使用木材の特質を学んでいきます。良い家具は解体も容易です。良い材を用い丁寧に組み上げられたオークチェアの解体はアンティーク家具全般を学ぶ上で最適な教材になります。ジェオグラフィカではアンティーク家具を修復するにあたっては、何年か後に、再度修復が必要になる場合を考慮し、同様の方法で復元可能な修復技術のみを用います。無駄に強度を追ってネジ、クギなどを使用せずに、同種の木材を使用したジョイント技術や、高度なカップリング技術を場面によって使い分け、木材の持つ柔軟性を生かした木工作業を心掛けています。
修復作業に用いられる木材はキャビネットの背板、引き出しの底板等を除けば、ほとんどがその家具が作られた年代と同時代の部材が用いられます。これらの部材の多くは、過去の修復の中で不要になった部品等のストックの中から調達されます。古い家具の端材であったり、交換された部材をオリジナルに合わせて再加工したものものです。小さな木片も大切に使い切ることが大切です。
また、金属製の引手や可動パーツ、鍵等も多くのストックがあります。
ストックのパーツの中に適切なものがない場合は、当時の鋳型から作られたリプロダクションのパーツが使用されます。これらの部品の交換や再生は、アンティーク家具としての風合いと価値を落とさずに、実用性を高める為に最大の注意を払って行われます。
工房に入荷するほぼ全ての家具は、膠(にかわ)を溶かすスチームや、伝統的な工具を用いて丁寧に解体されます。それぞれのパーツは当時接着剤として使われていた古い膠(にかわ)等の残留物を取り除き、隅々までクリーニングされ、ジョイント面も細かく調整されます。これは組み付けの精度を上げ、十分な強度を得るための大切な作業であり、アンティーク家具を日常生活で普通に使用可能なものにするために必要な作業なのです。
組み上げの行程では、後の塗装作業を意識しながら、より細部に渡る修復が平行して行われます。木工作業がいかに丁寧になされるかどうかで、最終的な塗装の仕上がりも大きく変わってしまうのです。
最終的な組み上げ工程は平坦に保たれた金属製の大きな定盤の上で水平を見ながら欠損部品の再生、強度不足の部品の交換、可動部分の調整、鍵、引手などの金属部品の調整、交換、など多岐に渡るチェック項目をクリアして、木工修復がやっと終わります。
Finish-work -塗装-
木工修復を終えた家具は塗装工程に移されます。塗装工程は、オリジナルの塗装の状態によりいくつかの異なる方法が用いられます。一つ一つコンディションに違いのある現物をあたって最適な方法を導き出すことがフィニッシャー(仕上げ担当)にとって最も重要な仕事の一つとなります。
オリジナルの塗装状態が良いと判断されたものは、ホワイトスピリッツや、特別な溶剤などで塗面をクリーニングし、丁寧に表面をならした後にシェラックニスなどで光沢を蘇らせます。
塗装状態のあまり良くないものは、細心の注意を払い塗面のみを薄く剥離します。その後クリーニングをし、下地調整のために軽くサンドぺ-パーを掛け、自然に変色した木地をあらわにします。この時に木地まで削ってしまうとパティーナの再現が不可能になってしまいます。よって、塗装工程においてはサンディングマシーン等の機械工具は基本的に使用せず、全てをほぼ手作業で行います。その後丁寧な目止め、染料、顔料等での着色を施し、シェラックニスによる塗装で仕上げていきます。
現代の塗装ではあまり目止めを重視しませんがシェラック塗装に於いては目止めは非常に重要な工程です。目止めが十分になされないと仕上がった後の手触りはザラザラしたものになり、色味も悪く質感的にも強度的にも劣ったものになってしまいます。ジェオグラフィカのアンティーク家具の特別な手触りはこの目止めによってもたらされるものが大きいのです。
シェラック塗料は塗膜が非常に薄く仕上がるために木材の質感を損ないませんので部分的な塗装不良等はこれらの方法の組み合わせで対応することが可能です。同様に家具の内部や、裏側も丁寧にクリーニングと塗装が施されます。
Shellac Varnish -シェラックニス-
現在ジェオグラフィカで使用されるシェラックニスは全て自社の工房で調合、製造されています。
修復において一口にシェラック塗装といっても、製作年代や工房によって微妙に成分構成や、塗装工程は異なります。それらを見極め最適な配合のニスを選択するためには基本塗料であるシェラックニスを常に新鮮でニュートラルな状態で保持することが必要だからです。
シェラックニスに余分な保存料や添加物が付加されていると、以前の塗装と反応し塗膜を不安定にすることがあるのです。
通常シェラックニスは6ヶ月ほどの使用期限が設定されていますが、ジェオグラフィカでは保存料や添加物の使用をさけるために1週間で使い切るほどの量のみをその都度製造しています。また、溶剤として用いるアルコールにもこだわり、不純物をほとんど含まない食品基準の醸造エタノールを基本溶剤として使用しています。
新鮮なオリジナルシェラックニスで施された塗装は、しっとりとしてなめらかで、驚くほど気持ちの良い手触りをもたらします。刷毛塗り、エアスプレー、フレンチポリッシュなど、アンティークの修復で用いられるいずれの塗装方法においてもその違いは顕著です。
新鮮なオリジナルシェラック塗装によってアンティーク家具の木目はより美しく表出し、色味は深まり、磨き込まれたような独特の艶が生じます。ついつい触れてみたくなる落ち着いた質感はオリジナルシェラック塗装ならではのものです。
Replacing Cloth -クロスの張り替え-
アンティーク家具の背板に貼ってあるクロスは一見キレイに見えても古くなりカビや汚れが付着したものが沢山あります。これらの古いクロスはクリーニングをしても後々の匂いやカビの原因となりえますので思い切って交換します。背板が木製のものは、汚れを丁寧に落とし再塗装することで再生しますが、古いクロスの貼ってあるものは背板ごと交換し新しいクロスを貼ります。新しいクロスは、その家具のデザインや色合い、用途などを考慮して最適なものを選びます。
オリジナルに近いもので貼るか、オリジナルを離れて新しい個性を与えるかを慎重に考え新しいクロスを選びます。
そうして選ばれたクロスは工房の熟練スタッフの手によって、ひとつのシワも見過ごすことなく美しく貼られ、アンティークキャビネットの修復は終わります。