GEOGRAPHICA

新しい古典

2023/12/21 | スタッフの日常

12月21日 大曲 美生

新作歌舞伎『流白浪燦星』を観てきました。
このタイトル、一発では読めませんよね。
何かというと、こちらです。

「ルパン三世」と読みます。

あのルパンを歌舞伎でやるという全く新しい試み。
しかも古典歌舞伎の名作、名場面へのオマージュ盛りだくさんで、歌舞伎らしさ満載の作品になると上演開始前から大きく話題になりました。
まだ歌舞伎超初心者の私ですが、これは気になる!!ということで非常に楽しみにしていました。

安土桃山時代に実在し古典歌舞伎作品にも登場する盗賊の石川五右衛門、アニメのルパン三世に出てくる石川五ェ門はその13代目の末裔ですが、
今回の新作歌舞伎ではその安土桃山時代にルパン三世や次元大介たちがいたら、という設定です。
お宝を巡る大泥棒同士の戦いを通して、ルパンたちと五ェ門の出会い、またあの斬鉄剣の誕生秘話なども描かれます。

感想を言えばキリがないのですが、
まずはとにかく全員がハマり役で全員が最高にかっこいい。市川笑也丈扮する不二子ちゃんも妖艶な美しさです。
衣装は原作アニメを見事に歌舞伎らしく昇華させ、かつらはそれぞれ古典に則った型で、ヴィジュアルが完璧。
古典歌舞伎の名台詞や決まりごと、早替わりの見せ場、割と何でもアリなファンタジー感や権力を求める真柴久吉のキャラクター、命をかけて大事な人を守る涙の場面などは受け継ぎつつ、
肝心なお宝はなんやかんやで逃してももっと大切なものを守れたり手に入れたりできたね、銭形は今日もルパンを追いかけていてなんだか楽しそうだね、というアニメルパンのお決まりパターンも外さない。
新作歌舞伎ならではの自由な台詞回しが随所に現れ、時事ネタやVIVANTネタも飛び出しました。
第二幕の始まりにはまさかのマモーが花道から登場して、漫談かのようなコミカルなしゃべりであらすじを振り返りつつ、客席との掛け合い(みんなで“マモちゃーん!”コール)もあって会場は大盛り上がり。

泣いたり笑ったり惚れ惚れしたり、感情が大忙しでした。
これはぜひ再演してほしいし、続きのお話も作れそうな終わり方でもあったので、
今後のルパン歌舞伎の展開にも大注目していこうと思います!