GEOGRAPHICA

りんご

2022/03/11 | スタッフの日常

3月11日 大曲 美生

セザンヌのリンゴの静物画が好きです。
たくさんのバリエーションがあり、日本にも所蔵している美術館がいくつかありますが、
世界中に散らばるセザンヌのリンゴを一生のうちに全て見ることが、夢のひとつでもあります。

ところであのリンゴ、なんだかリンゴに見えないな、
とずっと思っていました。
日本でリンゴの絵を描くときは赤色が基本ですが、
セザンヌのそれは明るい黄色やオレンジ色が印象的で、
どちらかというと桃やプラムのように見えます。
写実的な画風でもないし、セザンヌ独特の色彩表現なのかしら、
くらいに考えていました。

先日テレビで、フランスの豊かな田舎暮らしを追う番組を見ていたら、
ある女性のキッチンで、フルーツが盛られたバスケットが少し映り込みました。
そのバスケットにはバナナ一房と、小ぶりなリンゴが数個入っていたのですが、
そのリンゴがまさに、セザンヌの描くリンゴの色だったのです!
フランスのリンゴは本当にこの色なのか!!
と妙に感動しました。
リンゴ=赤、という固定概念に囚われて、
セザンヌが見ていたリンゴは実際はどんな色なのか今まで調べもしなかったことを恥ずかしく思いました…。

セザンヌがリンゴを描くことにかけた情熱、研究心の強さはよく伝えられているところです。
次にセザンヌのリンゴに出会ったら、彼の観察眼を信じて、存分にその表現を堪能したいと思います。