GEOGRAPHICA

『小説家を見つけたら』

2020/04/27 | スタッフの日常

4月27日 中野美穂

前回に引き続き映画の話です。

ショーン・コネリー主演、『小説家を見つけたら』を観ました。
天賦の文学の才能を持った下町生まれの少年と、たった一作の傑作を残して文壇から消えた大作家の交流を描いた作品です。

歳も生まれも全く違うけれども、文学の知識と書く事への情熱、そしてその才能を表に出さない不器用な生き方がどこか似ている二人。
彼らは師弟として、歳を超えた友人として、お互いの迷いや困難を理解し合う事で自身の問題とも向き合い、少しずつそれぞれの人生を前へと進めていきます。
行く先への不安、取り戻せない過去への後悔、誰しもの人生に訪れるさまざまな分岐点を丁寧に浮かび上がらせ、人との交流の中でその人自身の生き方を取り戻していく、
そんな味わい深くあたたかな描写がとても胸を打ちました。

ラストは少し切なくなりましたが、少年の成長と真っすぐな意思が伝わってきてとてもさわやかな気持ちになりました。
様々な事に思いを馳せながら、ゆっくりと丁寧に時間を過ごしたい時におすすめの作品です。