柿の種
2019/08/16 | スタッフの日常
8月16日 中野美穂
おつまみではなく、寺田寅彦の随筆『柿の種』の話です。
先日漱石山房記念館へと行ってきたのですが、年代毎の作品の展示だけでなく、縁の人々の紹介も充実していました。
英文学者として教鞭を執ったのち作家として大成した漱石。彼の元には分野に限らず数多くの人が集まりましたが、物理学者の寺田寅彦もその一人です。
特に彼は元教え子でありながら友人でもあり、漱石の方からも信頼と尊敬を受けた人物だそうです。
『柿の種』は以前から好きな本で、理系の学者でありながら随筆の名手とも言われた彼の、豊かな感性が光る名著です。
家族や友人との日常や小耳にした噂の話、取り組んでいる研究内容から最新の諸外国のニュースまで。
もちろん夏目先生とのちょっとしたエピソードなどもあり、思わずニヤリとしてしまいます。
顕微鏡の世界から時代も距離も隔てた遠い世界の話題まで、広い視野と鋭い観察力に満ちた内容で、何度読んでも新しい発見に出会える一冊。
理知的ながらも柔らかい好奇心にあふれたその文章を読むと、新しい事に興味を持つ事の大切さに改めて気付かされます。