2月28日 佐藤大文
こんにちは、塗装の佐藤です。
季節も変わり目を迎え、皆様いかがお過ごしでしょうか。
2月が終わります。新年があけてこの二ヶ月、いろんなことがありましたね。
1月!雪が降り積りましたね!!…2月!平昌五輪がありましたね!!それ以外何も無かったですよね!!!
前回の家具の日焼けによる剥離に続いて、今度は塗面異常による”クラック(亀裂やひび割れ)”についてお話しましょう。
今回の題材となるのはこの置時計。とてもプロポーションも良く、なかなか入荷してこないタイプのアイテムです。
コンディションの雰囲気は悪くないのですが、上部の丸みと左右のくびれにクラックの症状がでております。
これを剥離して、再塗装することで木目を綺麗に際立たせた光沢を蘇らせてあげましょう。
そもそも、どうしてこのようなクラックが現れるのでしょうか。理由は様々です。
ですが、憶測で挙げるとすれば---------
①塗装面(ニス)の厚み…厚過ぎると表面だけが乾き、その下の中間層は時間をかけて乾燥していく為、縮んだ中間層の痩せに引っ張られて表面の層に割れが生まれます。逆に薄すぎるとすぐに乾燥の影響を受けて層が縮み、割れてしまいます。
②環境面…乾燥が強い場所、または周囲の温度が高い場所で長時間使用されていた。簡単に言えば、干ばつ状態になります。
とはいえ、憶測は憶測です。あとは形状も急なカーブがかかっている為に木材や塗装面の縮みの影響が出やすいというもの考えられます。難しいところですね。
というわけで、以上のことを念頭に置いて剥離の作業に入ります。
剥離作業する場合において、作業者が気にするのはやはり効率性、体力、時間といった要素でしょう。既出かと思いますが、使用する道具には二種類に分けられます。①化学的…溶剤(リムーバー、ラッカー、アルコール)②物理的…研磨布紙(ペーパー)、革裁で削ぐ、があります。第一に、リムーバーは強力な剥離剤故に取り扱いが面倒なので最終手段です。左の画像はラッカシンナー(アルコールより強い)をスチールウールでこすって落とした状態です。やはり厚みがありクラックが根深い為、少々時間がかかります。一息ついて次を試します。
次は革裁ちです。しっかり削れます。しかし範囲が狭くてこれも時間がかかりそうです。ですが力で削れるということは当たりの範囲の広いサンドペーパーでも削れるということです。ちなみに革裁ちはレザー生地を裁断する道具としてよく用いられますが、家具を解体したパーツのクリーニングで使用します。また、革裁ちで塗面を削ぎ落とす時注意すべきは刃の打痕がついてしまうことです。しっかりサンディングしないと着色した時に傷の痕がしっかり目立ってしまいます。気をつけましょう。慣れが必要ですね。
そんなわけで、ペーパーで全体的に落とすことにしました。結果は下の画像となります。すっかり真っ白になりましたね。健康的な木地で荒れも少なく良好です。これが仕上がるととても映えある家具に生まれ変わります。下地作業の重要さが実感できます。
これにより、想定していた時間をより削ぐことができました。たったペーパー一枚で家具が綺麗に仕上がるし、溶剤を使って根気よく落とす時間も体力も削減されました。まさに一石二鳥です。
粗い番手のサンドペーパーで全体を丁寧に、カーブに沿って力のムラ無く塗面を落としたら更に番手の細かなペーパーで肌理(キメと読む)を更に細かくしていきます。大体#400まで削ってあげましょう。健康な木肌になりましたね。この下地が大事なのです。この段階でサンディングの強弱のムラがあると後ほどステインで着色した際に、部分的に黒く色が入ったりして美しくありません。
それではステインで着色をしましょう。
こんなんなりましたね。苦労した甲斐あって、色の入りも良好。クラックで邪魔されて目立たなかった杢目がようやくはっきりと見えてきました。正面との色味も合っています。あとはニスを入れて輝きを取り戻してあげましょう。
くびれのクラック部分。↓
ペーパーの当て方が難しいので、細かいペーパーで塗面を薄く削って粗いケンマロンで更に強く削ります。
大分マシになりましたね。
より鏡面に近づける為、目止めもしてニスをかぶせてあげると見目麗しい置時計に生まれ変わりました。良かったですね。
以上がクラックについての解説でした。
私の右手も指先が常にクラック状態ですがどうにもなりません。
乾燥の時期も直に終わりが来れば湿気に悩まされる季節がやってきます。
とりあえずその場しのぎで心身ともに耐え忍ぼうと思います。
それではまた。