GEOGRAPHICA

背板を眺めて悟りを開く1.5時間。

2017/06/28 | 修復スタッフのこぼれ話

6月28日 佐藤大文

こんにちは。塗装の佐藤です。
皆様ご機嫌いかがでしょうか。ちょっと前に6月になって早速終わろうとしております。もう夏ですね。

梅雨のような湿気の多い時期は空気中の湿気がニスに混ざる事があり、塗装直後には白濁したような見え方をします。しっかり乾燥させれば水分がアルコールの揮発とともに抜けていって次第に白濁はなくなるのですがいずれにせよ塗装者泣かせではあります。 珍しく工房スタッフらしい話から始まったわけですが、そうです。今回は久しぶりに修復塗装についてのお話です。

さて、これは良いツートーンのブックケースの内部ですね。見事な日焼けがまるで幾何学模様の如く表情を出していますね。
下段の色の濃い場所は既にステインで色を調整した第一段階の部分になります。原状の写真を撮り忘れましたので…。
本当は下段も中段の様な日焼け跡がございました。
例によって色味を可能な限り統一にする作業です。正直、経験を重ねても時間と集中力と根気がいる作業です。
ひたすら色を足したり引いたりします。

IMG_4264.jpg 方法は何種類かありますが、今回私が選択したのはステインをウェース(布)で拭き残して色をつける方法です。特に難しいのは日焼けが重なっている部分です。グラデーションが重なっている箇所は狭い範囲での濃淡の差を操作しなければならない為、マスキングテープなどでガイドを作ったりもするのですがこれもまた的確に差を埋めるのは非常に困難なのです。

よって、大体遠目から見て、”何とはなしに濃淡があるかしら…”くらいのぼかし程度で丸く収めようという作戦に出ました。決して逃げではありません。見切りというものなのです。わかってくれとは言いませんが。


IMG_4270.jpgIMG_4271.jpg
 
 色を少しずつ調整しながら乾燥をさせ、色味を決定したら一度その面はニスでコーティングをします。そうすることで再びニスの上から色の重ねを可能にしたり、ひいては誤って色を剥がすリスクも減るわけなのです。

 また、ニスの濡れ色で最終的な色味の見え方が判断できます。そうした作業の積み重ねの結果が上記の二枚となります。
一枚目と比べれば大分差が埋まりましたね。やはりグラデーションまでを完璧に操作することはできませんでしたが、大体まとまりがつきました。最後はニスで仕上げて、やれやれです。
 
 背板とにらめっこを続けて正味時間は90分弱といったところでしょうか。しかしこうした作業もあくまで一工程に過ぎません。一日に何点ものアイテムを抱えての作業となりますから消費時間が少ない事に越した事はありません。
 常に確実性、効率性、決断力が重要なファクターとなります。実際、写真の結果より良いクオリティの結果は出せたでしょう。こうした技術職で覚えるたった一時の達成感の裏には少なからず、結果に対する後悔もあってしかるべきだと思います。

  それが更に次の高みを叶える糧のようだと急に悟った私でありました。
  
 この感想文を原稿に書きまとめて先生に出せばきっと花丸二重丸がもらえる気がします。今の小学校って提出物に花丸ってもらえるんでしょうか。どう見ても巨大なナルトにしか見えません。最近私も自宅で冷やし中華始めました。

 とってつけたようにナルトを付け合せにしようかと思います。夏っていいですね。私は冬のほうがめっぽう好きです。

 それではまた。