GEOGRAPHICA

家具の塗装仕上がりを流し目で追いかけよう。~その弐~

2016/10/16 | 修復スタッフのこぼれ話

10月16日 佐藤大文

 さて、先日のライティングテーブルの第二編。締めくくりです。少々更新が遅れましたがお待たせしました。
皆様こんにちは、10月も折り返し地点に参りました。今月分の入荷も終了し、コンパクトな倉庫が移住してきた家具達でひしめきあっております。
 吐く息も夜中には白くなりました。暦の上では秋なのに地球にはそんなのお構いなしみたいですね。
それではその後。変わり果てた…もとい、生まれ変わったライティングテーブルの天板と全体の塗装の仕上がりを順を追ってみてみましょう。

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突然真っ白になりました。少々工程を端折りましたが、天板の古い塗面をリムーバーと呼ばれる強力な剥離剤で塗装面をあたかも食器の油汚れを洗剤で浸け置きして浮かせて落とすかの如くスクレーパーでそぎ落とし、残留物をアルコールでこすりながら洗浄し、木地を出します。
 
 その後、仕上サンダーという機械を使いペーパー#150にて表面に残ったカスや染みこんでいるステインの色むらをまんべんなく取り除く要領で均一の状態になるようにサンディングを施します。ある程度傷も落としますが、完全には消しません。材そのものの使用感という要素は修復においては忘れてはならない気遣いの一つだからです。

以上の流れは、私の第一回目の投稿での説明で言えば、「下地処理」の剥離、サンディング作業にあたります。
そして右の画像が「染色処理」、染料であるステインの濃い色(ダークオーク色)にて色を出します。この工程に関してはいずれまた深く掘り下げたいと思いますので詳細は割愛致します。

いかがでしょうか。オリジナルの塗面と比べてみると本来の木の表情がはっきりと露になったのを感じていただけるかと思います。
多少の違和感はあるでしょうが、オリジナルの塗装面の荒れ方次第では修復前と後での全体の雰囲気の差は文字通り別物のように豹変します。

その木材の表情の変化の過程一部始終を我々だけが見れる贅沢、塗装修復の醍醐味の半分はそこにあると私は感じております。…というわけで、お待ちかねの塗装後の姿をご覧下さい。

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まずは天板面。まるで荒れた荒野に水が引かれたようにみずみずしい姿になりました。深みと透明感が出てますね。虎斑模様がしかり映えて見違えるようです。左の画像からレッドマホガニーのステインで赤味を足したのが右の画像です。ステインは薄い色でもある程度重ねるとシェラックニスで仕上た後の色の深みが増します。目で楽しめるのもアンティーク塗装の良さなのです。

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 中身はどうでしょう。最下層の天板裏についたニス垂れもなくなり内部も綺麗になりました。ちなみに補色程度で済ませ、ニスのみで仕上ております。余計なステインは時に汚れたような雰囲気を出してしまう場合もあり、その判断で時には外見のバランスを壊し大失敗する事もしばしばあります。塗装の難所の一つです。

IMG_3036.jpg   幕板脚部はオリジナルで補色してニス仕上げです。天板に赤味を足したのは本体との色味を極力近づけて違和感をなくすためです。この微調整で印象が変わったりもします。

 担当した木工の者の話では入荷時の状態は酷く、手数の多い天板内部の微調整、脚部の等の締めや矯正に手を焼いたそうでそれでもしっかり形を作ったとのこと。

まだ作業における課題は数多くありますが、素材を生かすも殺すも塗装次第。スタッフやお客様にお喜び頂ける品質を日々目指して参りたいと思います。
港北ファクトリー、お近くをお訪ねの際には是非ともご来店くださいませ。

 ご就寝前にはなるべく腹巻を装着して寝冷え対策を忘れずに。なるべく色は緑がいいと思います。風邪にはご用心下さい。
それではまた。