GEOGRAPHICA

塗装のおはなし。

2016/09/29 | 修復スタッフのこぼれ話

9月29日 佐藤大文

当ブログをご覧頂き、誠に有難う御座います。
そして初めまして。港北ファクトリーにて塗装担当をしております、佐藤です。
以後、宜しく御願い致します。

さて早速ですが、アンティーク家具の塗装というのはどのような作業なのでしょう。
まず簡略的にご説明しましょう。

下地処理(剥離,サンディング,塗面慣らし,クリーニング)
→ 染色処理(ステイン) → リタッチ/タッチアップ(補色)→ 仕上処理(ニス 又は ワックス)

といった作業が日々行われます。アイテムやコンディションによっては省く工程もあります。
どれも大切な工程であることには違いはありませんが、今回は「塗面慣らし…に使う道具!」ついて着目したいと思います。

通常塗面慣らしは塗料の塗り重ねの際に行われるものですが、家具修復では最初に来る工程です。
そして最も基本で地味でありながら大切な作業なのです。
これには第一に「塗面に傷をつけ、染料や塗料のノリ(食い付き)を良くする」という意図があります。
無論、塗面に付着した経年変化による汚れ等のクリーニングも兼ねて行われます。更に、塗面の厚みの調整にも使われます。
我々では通称「ケンマロン(がけ)」と呼ばれる作業です。

家事仕事をこなす方々はピンときたかもしれませんが、市販されているスポンジの裏に使われている不織布研磨剤という素材。
フライパンの焦げ付きを落とす時に重宝するあの面です。それがケンマロンです。
そして我々が使用するのは作業用に改良されたスーパーなケンマロンなのです。
中でも大体弊社で使用するのはこの三種類です。ぞれぞれ、番手といって粗さが違っておりそれにより用途も様々です。

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このケンマロン、どのような構造なのかというと、絡ませた繊維に破材という粒子状の異物をまぶして接着剤で固めてあります。
なのでサンディングペーパーとは違い、繊維がクッションとなり過度に塗面を削ってしまうのを防いでいるわけなのです。
画像をご覧頂くと、天板の半分下が白くくもっているのがおわかりになりますでしょうか。

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これは塗面に細微細な傷が無数につき、染料や塗料が食いつきやすい状態となっています。傷の度合いによって、ステインの入り具合なども調整することができます。使用方法は様々で、下地処理の必需品の一つです。
ちなみにケンマロンは商品名です。

以上、長くなりましたが道具一つの解説だけでもまだ書き足りないほど職人の世界は深く広いのです。
一見しても百聞にしても、ただ一度だけの自身の経験そのものが本当の言葉を持つ職業が一つ、ここにあるのだと日々実感しております。

それではまた。