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おすすめ本『チューダー王朝弁護士シャードレイク』

2020/07/31 | スタッフの日常

7月31日 中野美穂

いよいよ7月も終わりですが、雨が続き、新型ウイルスとの戦いも終わりが見えず、なかなか例年通りの夏とはいかないようです。

相変わらず外出は控えつつという状況なので、ゆったりとしたおうち時間におすすめの本をご紹介します!


『チューダー王朝弁護士シャードレイク』シリーズ。
16世紀、ヘンリー8世の時代を舞台としたヒストリカル・ミステリ作品で、イギリス本国では英国推理作家協会(CWA)賞を受賞した人気の小説です。

主人公であるシャードレイクが毎回クロムウェルの命を受けて奇妙な事件の解決に挑む物語なのですが、このシャードレイクという人物が何とも良い味なのです。

クロムウェルに目を掛けられる程の才覚がありながら、身体的な問題を持つ事への劣等感や卑屈さを抱え、高潔さの中にも深い孤独を滲ませる。
そして彼の立ち向かう事件の背景には当時の複雑で血なまぐさい宗教や政治の混沌とした情勢が絡み、シャードレイク自身も決して正しさだけではいられない。
長い物にまかれつつも無慈悲になり切れず、傲慢にふるまいつつもうじうじと鬱屈した弱さが垣間見える、このくたびれた感じが人間味に溢れていて魅力的です。

史実と照らし合わせてみると一層面白い、読み応えのある作品なのですが、残念なことに日本語版は2014年に出版された3作目で止まってしまっています…。
日本でも読者が増えて、ぜひ続編を出して欲しいシリーズです!